★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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令和6年度から障害福祉事業所で業務継続計画(BCP)を作成していないと「業務継続計画未策定減算」になると聞きました。ただ業務継続計画(BCP)をどのように作成したらいいのか、その研修や訓練で何をしたらいいのかさっぱりわかりません。
そこで減算を避けるために、業務継続計画の作成から研修や訓練の方法まで詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度から業務継続計画(BCP)作成が義務化され、運営規程に必ず記さないといけません。
しかし義務化への変更を知らず、運営規程の変更や必要書類の整備をしていないと減算の対象になり自治体とトラブルになる可能性があります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「業務継続計画(BCP)未策定減算」の要件がわかります
- 「業務継続計画(BCP)未策定減算」を防ぐ対策がわかります
- 「業務継続計画(BCP)未策定減算」の回避方法がわかります
目次
【令和6年報酬改定】「業務継続計画未策定減算」とは?BCPの減算防止対策を解説
令和6年度の報酬改定により障害福祉事業所を対象に、感染症や災害が発生しても必要なサービス継続ができる体制構築を求めるため、BCPの未作成や必要な措置が講じられていない場合は「業務継続計画未策定減算」が適用されるようになります。
<業務継続計画(BCP)の種類について>
種類1:災害発生時の業務継続計画
種類2:感染症発生時の業務継続計画
(対象施設の例) | (単位数) |
共同生活援助(障害者GH)等施設系 | 100分の3単位の減算 |
就労継続支援A型B型、児発/放デイ | 100分の1単位の減算 |
<「業務継続計画未策定減算」の条件>
・感染症と自然災害の業務継続計画を作成していないこと
・業務継続計画に従って必要な措置が講じられていないこと
※「業務継続計画未策定減算」の例
令和6年10月の実地指導でBCPの未策定が判明した場合、令和6年4月1日から減算が適用されます。
令和6年度から義務化される「業務継続計画未策定減算」の概略がわかりました。
そこで速やかに業務継続計画(BCP)を作成して減算を防ぎたいと思うのですが、どのような点に注意すれば実地指導でも問題なく運営できるでしょうか?
ポイントは業務継続計画(BCP)に必要事項の記載漏れを防ぎ、定期的に訓練や研修を実施することです。
業務継続計画(BCP)の内容は最低基準を忘れず記載し、運営規程や記録書類に反映いたしましょう。
以下では「業務継続計画未策定減算」を避けるために、業務継続計画(BCP)作成の義務化と実施手順についてわかりやすく説明いたします。
ポイント1:BCP作成は厚生労働省のひな形を活用
令和6年度より義務化される業務継続計画(BCP)を作成するにあたって、独自の様式でBCPを作成するよりも厚生労働省のホームページにあるテンプレート(ひな形)を活用する方が正確で、手間なくカンタンに作成できます。
<厚生労働省による業務継続計画(BCP)のひな形について>
厚生労働省は各事業者がスムーズに業務継続計画(BCP)を作れるよう、作成のための解説動画に加えて、例示入りのテンプレートを提供してくれています。
→詳しくはこちらの厚生労働省のHPをご覧ください
※厚生労働省の例示入りテンプレを活用する注意点
・災害や感染発生時に対応する部署の責任者の名前はしっかり記入しましょう
・災害時に事業所内での避難経路をまとめておきましょう
・感染症対策として事業所内に備蓄品を持っておきましょう
・感染症発生時に連絡する関係各所をまとめておきましょう
令和6年度から義務化される業務継続計画の作成は、厚生労働省のひな形を使えば、内容や記録様式は殆どすぐに完備することができます。
ただ上記で挙げたテンプレ活用の注意点の項目は、事業所内でしっかり協議して埋めましょう。
令和6年度の開始時点で完成形を目指すのではなく、徐々に見直して災害時等に活用できるレベルまで高めていく余裕も大切です。
ポイント2:研修・訓練を定期的に実施
令和6年度より義務化される業務継続計画を作成することで、自然災害や感染症の発生時に、作成した業務継続計画通りに確実に実行できるよう、従業者に対して【年1回以上の】研修や訓練の実施を行い、その記録を保存することが求められます。
<BCPの研修・訓練の実施時の注意点>
・できるだけ全従業員が参加してください
・新入社員があればその都度行うことが望ましいとされています
・感染症の業務継続計画(BCP)の研修や訓練は、感染症対策委員会の研修と同時にしても問題ないです
・訓練は机上を含めてその実施手段は問われません
令和6年度に義務化される業務継続計画の研修と訓練はそれぞれ年に1回以上、最低でも計2回は実施が必要になります。
ただ感染症の業務改善計画の訓練や研修は、就Aや就Bなど年に2回以上は別の感染症対策で義務化されているので、その内の1回をBCPと同時開催いたしましょう。
業務継続計画(BCP)の訓練や研修実施も記録が必要で、別の感染症対策と共催した場合はその旨の記載も忘れずにすることが大切です。
ポイント3:運営規程に位置付ける
障害福祉事業で業務継続計画の作成をした場合は、運営規程で業務継続計画の位置付けと研修等の定期的な実施の文言を必ず加えて役所に届け出いたしましょう。
<運営規程の記載例>
第○条 事業所は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービス提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務 継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い、必要な措置を講じるものとする。
2 事業者は従業者に対し、業務継続計画について説明、周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施するものとする。
3 事業所は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
令和6年度の業務継続計画の義務化の実施において、どの事業所も運営規程を変更し変更届を出す必要があります。
自治体によっては業務継続計画内の研修や訓練の開催回数を指定しているところもあり、その場合は委員会の回数を運営規程に記す必要があります。
重要事項説明書との記載の齟齬にも気をつけながら運営規程を取りまとめましょう。
まとめ
令和6年度の報酬改定により新設された「業務継続計画未策定減算」に対する対策について詳しく分かりました。ありがとうございます。
運営規程を変更するとともに、定められた回数以上の研修や訓練を開催して記録を残していきたいと思います。
水害やコロナ禍を経験した後の時代で業務継続計画(BCP)の作成と実行は、事業所内でのトラブルをなくし安定した運営を行うために必要です。
厚生労働省のひな形(テンプレート)を活用すれば、とりあえずは簡単に業務継続計画を作成することができるのでオススメです。BCPの作成と訓練研修を定期的に行えば「業務継続計画未策定減算」は回避できるのでご安心ください。
業務継続計画の作成と定期的な研修や訓練の実施は障害福祉事業の経営と運営の安定につながるので、ぜひ要件をしっかり守って組織を作ってください。
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