
★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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障害福祉事業を運営していますが、令和7年度からの処遇改善加算の変更点がよくわかりません。月額改善要件が課されて、毎月の分配額が増えると聞きましたが不安です。
そこでお尋ねしたいのですが、令和7年度から処遇改善加算の月額改善要件はどのように変化し、どのように経営者として対応すれば良いでしょうか
令和7年度から障害福祉の処遇改善の制度は大きく変わります。。
毎月の分配額が強制的に増えるということは、人件費が多くを占める障害福祉事業の経営に大きな影響を与えるでしょう。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 令和7年度の処遇改善加算の月額改善要件の概要がわかります
- 処遇改善加算の月額改善要件の注意点がわかります
- 処遇改善加算の月額改善要件に対する経営戦略がわかります
目次
【令和7年~】処遇改善加算の月額改善要件とは?分配方法の注意点を経営目線で解説

令和7年度より障害福祉事業の処遇改善加算は月額賃金改善要件が課されることになり、新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる必要が出てきました。
(サービス) | 加算IIの% | 加算IVの半分の% | (受領額における必要改善額の割合) |
就労継続支援A型 | 9.4% | 3.15% | 約33.5% |
就労継続支援B型 | 9.4% | 3.1% | 約32.9% |
共同生活援助 | 14.4% | 5.25% | 約36.4% |
放課後等デイサービス | 13.1% | 4.9% | 約37.4% |
<令和7年の「月額賃金改善要件」の影響>
・一時金で多く分配している事業所は、毎月の分配を増額する必要があります。
・それ故に、一時金の額が減り、結果、賞与の額が減る可能性もあります。
・毎月改善が増額されるので社会保険料等の増額が見込まれます。
・毎月、既存の人員への配分が増額されるので、新規雇用の職員に充てる見込み額が減ってしまいます。
※「月額賃金改善要件」に対する戦略のポイント
増額することになる毎月分配額を、経営的な目線で、誰にいくら払うか、個別に変動させると事業所の成長につながる可能性があります。
⇨但しリスクもあるので、どのような点に注意して制度設計をした方が良いのかが今回の解説のポイントです。
令和7年度の処遇改善加算の月額賃金改善要件の概要についてわかりました。
ただ、その処遇改善加算の最新の月額賃金改善要件に対応するために、どのようなポイントに注意し、どのような対策が有効か教えてもらえるでしょうか?
令和7年度より、処遇改善加算の受領額から毎月多くの金額を分配しなければならない決まりになりました。
わかりやすく言えば、IIの処遇改善加算を算定していた場合は、受領額の35%を毎月支払っておけば良いということになります。
以下では、その35%程度の金額をどのように分配すれば効率的か、わかりやすく説明いたします。
注意:特定の職員に増額する場合の注意点

令和7年度の処遇改善加算より月額賃金改善の増額が求めらると、特定の有能な職員に増額することが想定されると思いますが、厚生労働省のQandAにより一部の職員への過度な集中が禁じられているので、不正を疑われない対策が重要になります。
<福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQandA 問2ー6>
問:賃金改善に当たり、一部の福祉・介護職員に賃金改善を集中させることは可能か
↓
答:処遇改善加算の算定要件は、事業所(法人)全体での賃金改善に要する額が加算による
収入以上となることである。その中で、例えば、一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させることや、同一法人内の一部の事業所のみに賃金改善を集中させることなど、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分は行わないこと。また、処遇改善加算を算定する障害福祉サービス事業者等は、当該事業所における賃金改善を行う方法等について職員に周知するとともに、福祉・介護職員等から処遇改善加算に係る賃金改善に関する照会があった場合は、当該職員の賃金改善に係る内容について、書面を用いるなど分かりやすく回答すること
(不正が疑われる事例) | ⇨(対策) |
仕事の成果が良くない職員への配分の集中 | ⇨人事評価をした上で、評価の良い職員に増額する |
勤務時間が少ない職員への配分の集中 | ⇨常勤以外に増額する場合の理由を整理する |
周知することなく特定の職員への配分の増額 | ⇨増額のための評価基準を明確にして周知する |
令和7年度の処遇改善加算の月額賃金改善要件は、特定の職員に分配額を多く渡すこと自体、禁じられたものではありません。
ただ、理由もなく不自然に一部の職員の分配を増額することは、運営指導や実地指導により否認されますのでご注意ください。
逆を言えば、人事評価基準や昇級判定が明確であれば、特定の職員への増額分配も可能になります。
今できること:任用要件や賃金体系の見直し

令和7年度の障害福祉事業の処遇改善加算は、月額賃金改善要件が受領額の35%ほど課されることになりましたので、月次分配額を再考するために任用要件や賃金体系の見直しをすることが大切です。
<任用要件や賃金体系の見直しのポイント>
・増額するに値する職位、職責、職務であるか。
・経験や資格や人事査定による昇給になっているか。
・勤務実績や職種と照らし合わせて不自然な増額になっていないか。
・月額賃金配分の割合を一定期間の後に再考する制度設計になっているか。
令和7年度の処遇改善加算の月額賃金改善要件の変化は、別の算定要件であるキャリアパス要件を見直す良い機会になります。
既存のキャリアパス要件を見直して、公平で適正に分配額の変動を設定できる体制にすれば、職員のモチベーションも上がるはずです。
また店舗拡大する際に新規雇用を検討するときには、月額賃金増を保証する人事システムは求職者を惹きつけるポイントにもなるでしょう。
まとめ

令和7年度の処遇改善加算の変化について詳しく分かりました。ありがとうございます。
新たに課せられた月額賃金改善要件に早く対応したいと思います。
令和7年度の処遇改善加算により、受領額の35%ほどを月額賃金改善する必要が出てきました。
多くの分配額を上手に使えば職員のモチベーションも上がりますが、根拠のない不公平な分配は禁止されています。 特定の従業員に多く払いたいという気持ちも生まれるでしょうが、キャリアパス要件を直して適正な賃金体系にすることをお勧めいたします。
令和7年度の処遇改善加算の制度変更に順応して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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