昔、障がい者グループホームの利用者さんが、長期で入院されることがあって、対応や人件費に困ったことがあります。
利用者さんが長期入院した時に取得できる加算があると聞いたのですが、どのようなものでしょうか?
長期で入院された利用者さんに対する支援で「長期入院時支援特別加算」を取得できます。
よく似た加算に「入院時支援特別加算」があるので混同しないようにご注意ください。
最近、ルールを守らずトラブルになるので、長期入院時の支援と加算について、この記事では以下のような内容がわかるように説明いたします。。
- 「長期入院時支援特別加算」の取得基準がわかります
- 「長期入院時支援特別加算」を取得する時の注意点がわかります
- 「長期入院時支援特別加算」の疑問や不安が解消される
目次
長期入院時支援特別加算とは?
障がい者グループホームでは、利用者さんで長期に入院された方に対して支援をすれば算定できる「長期入院時支援特別加算」があります。
<長期入院時支援特別加算とは?>
病院又などを概ね週に1回以上訪問し、入院期間中の衣類等の準備や利用者の相談支援など、日常生活上の支援を行うとともに、退院後の円滑な生活移行が可能となるよう、病院と連絡調整を行った場合に算定できる加算です。
<長期入院時支援特別加算の単位とは?>
指定共同生活援助事業所 :122単位/日
日中サービス支援型 :150単位/日
「長期入院時支援特別加算」について概要はわかるのですが、どのような基準を守ればいいのか心配です。
「長期入院時支援特別加算」について、その基準をイメージしやすいように説明してもらえるでしょうか?
「長期入院時支援特別加算」を適正に算定する際は算定期間の数え方と記録の整備がポイントになってきます。
この加算は 届出の必要がないので、実際の運用はより神経を使うことでしょう。
以下では具体的な例を示しつつ「長期入院時支援特別加算」についてわかりやすく説明いたします。
対象者:入院期間が3日以上
「長期入院時支援特別加算」の対象者は3日連続して入院するグループホーム利用者様であって、1日や2日間だけ入院すると対象になりません。
(入院期間) | 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 |
(長期入院時支援特別加算) | × | × | ○ | ○ | ○ |
(加算単位) | - | - | 122 | 122 | 122 |
入院期間が3日以上になると毎日、連続して「長期入院時支援特別加算」を算定することができます。
ただ注意していただきたいのは、加算が算定される期間が3ヶ月間の間に限定される点です。
加算を算定する場合はしっかりと入院日の記録をして確認しましょう。
実務:生活支援と連絡調整
「長期入院時支援特別加算」を算定するには、週に一度は入院する利用者さんに対してサービスの提供を行う必要があります。
※遠距離で訪問が非現実的な場合は入院先の医師等と連絡調整を行うことで要件を満たせる可能性があります。
<サービス1:生活支援>
・利用者さんに話を聞き相談にのる
・利用者さんの衣服を持って行く/受け取って洗濯する
・入院/退院時の手続きを支援する
<サービス2:連絡調整>
・病院や診療所と入院中の体調の経過について連絡を受け把握する
・退院した後の薬管理等のサポートについて連絡を受け把握する
・入院や他院の経過を家族に報告する
「長期入院時支援特別加算」は届出は要りませんが何もしなくても取得できる加算ではありません。
連絡調整と生活支援が加算の算定条件になるので、週に1度はその業務をこなすスタッフの確保のご準備ください。
週に1度の訪問は入院3日までの期間に行っても加算の要件を満たすとみなされます。
個別支援計画における位置づけ
「長期入院時支援特別加算」を算定するには、特定の利用者に対して入院した場合にはグループホームのスタッフが支援する必要があると事前から計画を立てておくことが望ましいです。
<個別支援計画における書き方>
・単身である
・家族が遠隔地に住んでいる
・家族と疎遠
・家族が不正行為をするおそれがある
監査指導の時にしばしチェックされるのが、入院時の支援と個別支援計画との関係です。。
個別支援計画を作成するときのアセスメントでしっかり体調のこと、治療のことが把握されていることが理想とされます。
直接支援のスタッフだけでなくサビ管と連携を取って入院時の支援を行いましょう。
長期入院時支援特別加算の「注意点」とは?
「長期入院時支援特別加算」を算定する上で、算定期間の数え方や記録の整備の仕方の基本的なポイントは理解していただけたかと思います。
「長期入院時支援特別加算」を算定した後で監査指導の時にトラブルになりやすいと聞いております。
気軽に請求できるので怖いこともあり、「長期入院時支援特別加算」を算定する際に、どのような注意点を踏まえればいいのか解説してもらえるでしょうか?
「長期入院時支援特別加算」を算定してトラブルにならないためには、入院期間全体の支援単位の請求の様子を理解する必要があります。
長期で入院した利用者さんに対しても現在のグループホームのスタッフで支援することになるので、経営者の立場として加算の単位の限度と基本報酬との関係を理解するようにいたしましょう。
基本報酬との関係:入退院日は?
「長期入院時支援特別加算」は、グループホームの基本報酬単位が算定できない状況で算定することができます。つまり重複はできません。
(入院期間) | 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 |
(適用) | 基本 | 加算 | 加算 | 基本 | |
(単位) | 331 | 122 | 122 | 331 | |
備考 | 入院 | 退院 |
つまり入院日/退院日は、「長期入院時支援特別加算」を算定できず、代わりに基本報酬が適用されます。
加算が算定されるのは3日目と4日目の二日間の244単位だけですが、この例では「入院時支援特別加算」を1回561単位算定できます。
つまりこの場合だと「長期入院時支援特別加算」より「入院時支援特別加算」を算定した方がトクだと分かります。
※請求時のサービス提供実績記録の書き方の注意点
・入院の初日からグループホームに戻った日まで「入院」と記入しましょう
・病院からグループホームに戻り、同日に再入院した場合は「入院→GH→入院」と記しましょう
1ヶ月に連続して3日以上(連続3ヶ月まで)
「長期入院時支援特別加算」は入院3日目から連続して3ヶ月目までの限定期間に算定することができます。
(入院期間) | 4/1 | 4/2 | 4/3~4/30 | 5/1 | 5/2 | 5/3~20 |
(長期入院時加算) | × | × | ○ | × | × | ○ |
(備考) | 基本報酬 |
注意していただきたいポイントは3ヶ月まで算定できると言っても、月を越えると最初の二日間は算定できない点です。
ただしこの算定できない二日間の間に加算取得の条件となる相談支援や連絡調整を行っても問題とされているのでご安心ください。
入居時支援特別加算との関係
障害者グループホームで「長期入院時支援特別加算」を算定する月は、同時に「入居時支援特別加算」を算定することができません。
・入院時支援特別加算とは?基準や注意点を解説
ポイントはひと月ごとに、長期入院時支援加算か普通の入院時支援加算かを選べるので、どちらかに決めるとずっと適用されるわけではない点です。
ただし長期入院時支援加算は毎日算定されるのに対して、普通の入院時支援加算は1回きりであり加算単位も異なるので、状況に応じてどちらの加算を算定すれば有利かお考えください。
加算を組み合わせて入院支援を考える
「長期入院時支援特別加算」について基準と注意点を理解できたかと思いますが、難しいのは「入院時支援特別加算」とどちらを選ぶか判断することでした。
「長期入院時支援特別加算」の活用に関してだんだん頭が混乱してきました。
数字にも強くないので具体例を出しながら、どのようなケースだと「長期入院時支援特別加算」を算定する方が有利で、どのようなケースだと不利なのか解説してもらえるでしょうか?
「長期入院時支援特別加算」を算定すべきタイミングは実務経験がないと分かりづらいかもしれません。
利用者さんの支援がもちろん第一ですが、より良い加算の選択で事業所の経営が少しでも安定するように、いくつかの例をお示しして説明したいと思います。
事例1:4/1~6/10(入院)
(期間) | (加算) | (単位) |
4/1 | - | 基本報酬単位 |
4/2~4/3 | 対象外 | |
4/4~4/30 | 長期入院時支援特別加算 | 122単位×27日 |
5/1~5/2 | 対象外 | |
5/3~5/31 | 長期入院時支援特別加算 | 122単位×29日 |
6/1~6/2 | 対象外 | |
6/3~6/9 | 入院時支援特別加算(ロ) | 1,122単位(1回) |
6/10 | - | 基本報酬単位 |
「長期入院時支援特別加算」を算定すべきタイミングは、このように入院期間が連続して長いと月毎にご判断ください。
基本的に入院期間が長くずっと病院にいらっしゃる場合は「長期入院時支援特別加算」を算定した方が加算の単位は多くなります。
事例2:4/1~4/11(入院)
(期間) | (加算) | (単位) |
4/1 | - | 基本報酬単位 |
4/2~4/10 | 入院時支援特別加算(ロ) | 1,122単位(1回) |
4/11 | - | 基本報酬単位 |
(期間) | (加算) | (単位) |
4/1 | - | 基本報酬単位 |
4/2~4/10 | 長期入院時支援特別加算 | 122単位×9日=1,098単位 |
4/11 | - | 基本報酬単位 |
9日間の同じ入院期間を対象として、「長期入院時支援特別加算」を算定した場合と、「入院時支援特別加算」を算定した場合を比べてみました。
どちらのパターンでも適切な加算の算定なのですが、「入院時支援特別加算」を算定した方が、24単位多いことが分かります。
事例3:4/1~4/12(入院)
(期間) | (加算) | (単位) |
4/1 | - | 基本報酬単位 |
4/2~4/11 | 入院時支援特別加算(ロ) | 1,122単位(1回) |
4/12 | - | 基本報酬単位 |
(期間) | (加算) | (単位) |
4/1 | - | 基本報酬単位 |
4/2~4/11 | 長期入院時支援特別加算 | 122単位×10日=1,220単位 |
4/12 | - | 基本報酬単位 |
次は変えて10日間の同じ入院期間を対象として比較すると、今度は逆に「長期入院時支援特別加算」を算定した方が、加算額が多くなることが分かります。
つまり「入院時支援特別加算」か長期の支援加算か、そのどちらかを選ぶ場合は「9日以内か10日を越えるか」という点を基準に判断すれば最適に選べることが分かります
ただし「長期入院時支援特別加算」は週に1度の支援をする必要があり、1回限りの「入院時支援特別加算」とは異なるのでそうした支援の量の違いもご配慮ください。
まとめ
「長期入院時支援特別加算」について徹底的に解説してくださりありがとうございました。
これで長期に渡って入院される利用者さんが出てきても、焦らず人員と加算を確保して適正に支援と対応することができそうです。
「長期入院時支援特別加算」は10日以上入院される利用者さんがいたらご活用をご検討ください。
また入院されていても利用者さんに対する支援は継続する必要があり、その入院した利用者さん含めて人員配置基準は定められるので、加算の取得だけでなく労務や人事の社会保険など様々な面を配慮することが望ましいです。
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