障害者グループホームを運営していますが、夜間の従業者が集まらず賃金も高く悩んでいます。そこで「断続的労働」という制度を使えば、最賃など支払わなくてもいいと聞きましたがあると知りましたが、実務や加算との関係がよくわかりません。
お尋ねしたいのですが、グループホームの夜間支援の「断続的労働」制度を利用する上での注意点やオススメの活用法を詳しく教えていただけますでしょうか?
夜間勤務が多い障がい者グループホームで近年注目されている制度が「断続的労働」です。
ただ「断続的労働」の制度は複雑で自治体も熟知していないこともあり、手続きを進める際に用心しないと実地指導でトラブルになるリスクがあります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 障害者グループホームの「断続的労働」の許可条件がわかります
- 「断続的労働」のメリットや注意点がわかります
- 「断続的労働」と夜間支援体制等加算の関係がわかります
目次
【GH】夜間支援の「断続的労働」の注意点とは?
障害者グループホームの夜間時間帯(22時〜翌5時)の労働に関して、「断続的な労働」として労働基準監督署の許可を受ければ、その労働に関して労働基準法の労働時間や最低賃金、休憩・休日に関する規定の適用を除外することができます。
<「断続的労働」とは>
「断続的労働」とは、休憩は少ないが手持ち時間が多い業務のことです。障害者グループホームで言うと、夜間勤務の手持ち時間が実作業時間を上回るものが対象です。ただし深夜労働には2割5分以上の割増賃金の支払いが必要です。
※最低賃金を減額することも可能です
「断続的労働」のうちで、実作業時間と手持ち時間が交互に繰り返されるものは最低賃金を減額できます。障害者グループホームの夜間支援では、待機と巡視のパターンが当てはまります。
障害者グループホームで利用できる「断続的労働」の概略についてわかりました。
ただ実際に「断続的労働」制度を利用する上でどのようなポイントに注意し、どのように活用していくのがオススメか教えてもらえるでしょうか?
「断続的労働」の制度は簡単なようで頻繁にミスも起こり、実地指導の時に返金になったと仄聞いたします。
特に「断続的労働」と夜間支援体制等加算の関係は間違えやすいので注意いたしましょう。
以下では更に「断続的労働」を利用する上での注意点やオススメ活用法をわかりやすく説明いたします。
「断続的労働」の許可申請の必要書類
障害者グループホームの夜間支援業務に「断続的労働」を適用しようとする場合は、労働基準監督署に「断続的労働」の許可申請を行う必要があります。
<「断続的労働」の許可申請の必要書類>
1 断続的労働に対する適用除外許可申請書
2 所定労働時間内におけるタイムスケジュール(GH:勤務体制一覧表)
3 対象業務のマニュアル/作業規定/業務日報(GH:サービス提供記録)
4 巡回経路(GH:周辺位置図)
5 労働条件通知書または雇用契約書
グループホームで利用できる「断続的労働」制度の許可には複数の書類を準備する必要があり、書類準備の時間が比較的かかる点に注意いたしましょう。
特に上記3のタイムスケジュールに関しては、他の職務と兼務する場合にもそれぞれの手持ち時間と実作業時間を明確にする必要があります。
また「断続的労働」を適用する場合の上記5の雇用契約書等を作成し直すことも求められるので留意することが大切です。
「断続的労働」を適用するメリット
障害者グループホームの夜間支援体制に対して「断続的労働」を適用する場合、夜間支援従事者にあたる従業員の負担が軽減され、夜間でも働きやすい環境を整備することができます。
<「断続的労働」を選ぶメリット>
・通常の勤務に比べて支払う賃金の額が少ない
・待機時間が多いため労働の負担が少ない
・求人が難しい夜間支援員が確保しやすい
・それでいて夜間支援等体制加算を取得することができる
障害者グループホームで「断続的労働」制度を利用することは、特に経営側にとってメリットが大きいです。
障がい者グループホームの事業者が多店舗展開を考えたとき、「断続的労働」の制度をうまく使えば夜勤の従業員の求人の負担は減るでしょう。
従業員にとっても手持ち時間が大きく確保できるので働きやすい環境になるでしょう。
「断続的労働」の注意点とは
障害者グループホームの夜間支援体制に対して「断続的労働」を適用する場合、「断続的労働」の夜間支援員に付随する世話人等の業務に関して、従業員の人員配置や常勤換算数が異例の取り扱いになるので注意が必要です。
<「断続的労働」に付随する世話人等の業務の注意点>
・世話人や管理者の業務も「断続的労働」と看做されるか自治体により異なる
・「断続的労働」とみなされない世話人等の業務は通常の常勤換算で計算する
・「断続的労働」とみなされる世話人等の業務の時間数は通常の世話人業務に入らない可能性がある
※「断続的労働」と通常の世話人等業務の組み合わせはできません
・断続労働と通常の労働が一日の中で混在している場合は、「断続的労働」の許可は出ません
・日によって反復するような場合は「断続的労働」の許可は出ません。
障害者グループホームの人員基準の制度は「断続的労働」を前提に設定されたものではないので、基準を満たすための常勤換算の計算が一層複雑になります。
自治体を納得させるために、一旦は通常の夜勤で変更届を承認してもらい、後から「断続的労働」を認めさせる方法もありますが時間がかかるでしょう。
いずれにせよ「断続的労働」を承認してもらうには相応の時間がかかるので、利用者が待っていて急いで申請受理を目指さないといけない場合はご注意ください。
「断続的労働」と夜間支援体制等加算の関係
障害者グループホームの夜間支援体制に対して「断続的労働」を適用する場合、どの種類の夜間支援体制等加算を算定することができるかは慎重に自治体と協議する必要があります。
<夜間支援等体制① or ②のどちらか>
「断続的労働」は常時の労働ではないので夜間支援等体制加算①とは言い難いのですが、かといって宿直ではないので夜間支援等体制加算②ではありません。現在のところ自治体ごとに見解が異なっているので必ず問い合わせましょう。
障害者グループホームで「断続的労働」制度を利用しても、夜間支援等体制加算との関係調整は、慎重に協議をする一番のポイントです。
自治体としても他の事業者との公平性の観点から著しく援助の差異がある場合は同じ加算の算定を認めにくいでしょう。
もし協議に時間がかかるようでしたら他の自治体の実施例などを参考にしてもらって課題を減らしていくことも良い案です。
まとめ
障害者グループホームで利用できる「断続的労働」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
「断続的労働」の許可書類をすぐに作成して、自治体と協議し「断続的労働」を認めてもらうよう働きかけたいと思います。
「断続的労働」の制度は経営者側にとって負担のない夜勤環境を作ることができ、多店舗展開する際の求人に有効な手段になるでしょう。
ただ各自治体ごとによって「断続的労働」に対する見解が異なり、「断続的労働」の承認まで結構な時間を要する可能性に注意いたしましょう。 特に「断続的労働」と夜間支援体制等加算の関係の調整は難航する傾向があります。
しっかりと「断続的労働」の適用について協議を重ねていくことで、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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