★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
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令和6年度から障害福祉事業所で「感染対策委員会」の設置など感染症対策が義務化される。ただ「感染対策委員会」の組織を含め、感染症対策で何をしたらいいのかさっぱりわかりません。
そこで「感染対策委員会」の設置から感染症対策の内容まで詳しく教えていただけますでしょうか?
令和6年度から感染対策委員会の設置が義務化され運営規程に必ず記さないといけません。
義務化への変更を知らず、運営規程の変更や必要書類の整備をしていないと実地指導の時に自治体とトラブルになる可能性があります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 「感染対策委員会」の運営規程の書き方がわかります
- 義務化された3つの感染症対策のポイントがわかります
- 感染症対策のための準備の手順がわかります
目次
感染対策委員会とは?運営規程の書き方から記録書類まで解説
令和6年度から障害福祉事業で「感染症対策の強化に係る取り組みの義務化」が開始するので、それに応じて運営規程の変更や委員会記録、そして研修や訓練を実施する必要が出てきました。
<「感染症対策の強化に係る取り組みの義務化」について>
条件1:感染対策委員会の定期開催及び結果の従業者へ周知
条件2:感染症の発生及び蔓延防止に関する指針の整備
条件3:感染症対策の研修や訓練の実施
「感染対策委員会」の設置を含め、感染症対策の義務化の概略がわかりました。
そこで「感染対策委員会」を含め、感染症対策を適正に実施したいと思うのですが、どのような点に注意すれば実地指導でも問題なく運営できるでしょうか?
ポイントは「感染対策委員会」の構成員の責務や役割分担を明確にし、専任の虐待防止担当者を設置することです。
「感染対策委員会」の組織体制を作って運営規程や記録書類に反映いたしましょう。
以下では具体的な例を示しつつ「感染対策委員会」を含めた感染症対策の強化の義務化についてわかりやすく説明いたします。
条件1:感染対策委員会の定期開催と結果の周知
令和6年度より義務化される感染症対策の強化の取り組み実施では、感染防止のために「感染症対策委員会」を設置し、定期的に開催し、その結果を従業員へ周知する必要があります。
※障害福祉事業の種類によって求められる基準が異なります
<障害福祉事業の種類による「感染対策委員会」の区分について>
Aグループ:訪問系サービス、相談系サービス、就労定着支援、自立生活援助
Bグループ:就AB、共同生活援助(GH)、児発、放デイ、短期入所、生活介護等A以外
<Aグループの「感染対策委員会」について>
・対策範囲は「感染症の予防及び蔓延防止」のみ
・開催頻度は6ヶ月に1度以上
・専任の感染症対策担当者を決めておく
・構成委員に指定はない
・他のサービス事業者との連携の指定はない
<Bグループの「感染対策委員会」について>
・対策範囲は「感染症の予防及び蔓延防止」に加えて「食中毒の防止」
・開催頻度は3ヶ月に1度以上
・専任の感染症対策担当者を決めておく
・構成委員は複数の職種による混成が必要
・事業所以外の感染管理等の専門家との連携が望まれる
※感染対策委員会の開催記録の注意点
日時/参加者/検討内容/議事録証明者/参加者のアンケートを記すようにいたしましょう。
「感染対策委員会」の仕組みは実施している障害福祉事業によって大きく異なることがポイントです。
特に就A就Bやグループホームなどは食中毒の対策が必要で、食事提供加算を取得している事業所は調理員の委員会参加が必要になってきます。
また開催頻度も大きく異なるので年度はじめに委員会開催予定のスケジュールをしっかり準備しておくことが大切です。
条件2:感染症の発生及び蔓延防止に関する指針の整備
令和6年度より義務化される感染症対策の強化の取り組み実施では、感染症防止のための指針を各事業所ごとに整備する必要があり、平常時の対策と発生時の対応を定めることが求められます。
<感染症対策のための指針の内容について>
・事業所内の衛生管理
・支援に係る感染症対策(手洗い等の予防策)
・発生時の把握
・感染拡大の防止
・医療機関/保健所/市町村等との連携報告
・感染症対策委員会の構成
・感染症対策のための定期的な研修と訓練実施
障害福祉事業所ごとで定める感染症対策の指針は、それぞれの事業所のサービス内容や構造に応じた内容である必要があります。
特にマスク着用に関して従業員または利用者さんは様々な考えをお持ちだと思うので慎重に定めてください。
発生時の把握に関して利用者連絡網の定期的な見直しなど小まめな対応を心がけましょう。
条件3:感染症対策の研修や訓練の実施
令和6年度より義務化される感染症対策の強化の取り組み実施では、感染症防止のために従業者に対して定期的な研修や訓練の実施を行い、その記録を保存することが求められます。
※障害福祉事業の種類によって求められる基準が異なります
<障害福祉事業の種類による「定期的な研修及び訓練」の区分について>
Aグループ:訪問系サービス、相談系サービス、就労定着支援、自立生活援助
Bグループ:就AB、共同生活援助(GH)、児発、放デイ、短期入所、生活介護等A以外
<Aグループの「定期的な研修及び訓練」について>
・定期的な研修:年に1回以上
・定期的な訓練:年に1回以上
<Bグループの「定期的な研修及び訓練」について>
・定期的な研修:年に2回以上
・定期的な訓練:年に2回以上
就A就Bやグループホーム、そして児童系の事業所様は、年に2回以上も感染症対策の研修と訓練が必要になってきます。
感染症対策のための訓練は、発生時の対応に関する研修や指針に基づき、事業所内の役割を確認して演習等を実施してください。
訓練の実施方法は必ずしも実地の実施が求められているわけではなく机上の訓練でも構いません。
注意:運営規程に位置付ける
障害福祉事業で「感染対策委員会」の設置を含めた感染症対策を実施する場合は、運営規程で感染症対策委員会の設置の文言を必ず加えて、重要事項説明書と整合性を取りましょう。
<運営規程の記載例>
第○条
事業者は、事業所内外での感染症の発生及び蔓延防止のために、次に掲げる通り必要な措置を講じます。
・感染症の発生及び蔓延防止を啓発・普及するための研修や訓練の実施を定期的に行い、研修を通じて、感染症対策の向上や知識や技術の向上に努めます。
・感染症の発生及び蔓延防止のための指針を定めます
・感染症の発生及び蔓延防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業員に周知徹底いたします。
令和6年度の感染症対策の義務化の実施において、どの事業所も運営規程を変更し変更届を出す必要が生じます。
自治体によっては感染症対策委員会の開催回数を指定しているところもあり、その場合は委員会の回数を運営規程に記す必要があります。
重要事項説明書との記載の齟齬にも気をつけながら運営規程を取りまとめましょう。
よくある質問
「感染防止委員会」は事業所単位で設置する必要がありますか?
答:必ずしも事業所単位で設置する必要がありません。法人単位で設置も可能です。
「感染対策委員会」の参加人数に決まりはありますか?
答:障害福祉事業の種類によって異なります。就ABやGHのグループBに関しては他職種の混合の構成が求められ間ます。
「感染対策委員会」の開催頻度に決まりはありますか?
答:障害福祉事業の種類によって異なります。就ABやGHのグループBに関しては3ヶ月に1回以上の開催が求められ間ます。
まとめ
障害福祉事業で設定が義務化された「感染対策委員会」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
運営規程を変更するとともに、定められた回数以上の感染対策委員会を開催して記録を残していきたいと思います。
コロナ禍を経験した後は「感染対策委員会」の開催は、事業所内でのトラブルをなくし安定した運営を行うために必要な組織です。
定期的に委員会を必ず開催し、感染症発生の事案があっても迅速に対応して、安心して継続的に事業所を利用してもらえるようにいたしましょう。特に事業所周辺のご近所さんやご家族は感染症クラスターが発生することに不安を覚えておられるので、定期的に十分な説明をすることが安全です。
「感染対策委員会」等の組織と定期的な研修や訓練の実施は障害福祉事業の経営と運営の安定につながるので、ぜひ要件をしっかり守って組織を作ってください。
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