★★★記事執筆者のご紹介★★★
この記事は障害福祉事業専門で、国家資格者である行政書士の戸根裕士が作成しております。多数の顧問先様との仕事から得られた、実務に役立つ注意点をまとめました。
戸根行政書士事務所のプロフィールはこちらですので、よろしければ弊社の支援方針や独自の強みなどご覧ください。
障害者グループホームを運営していますが、新たに「サテライト型住居」の設置を検討しています。ただ「サテライト型住居」は設置が難しく、トラブルも多いと聞くので心配になっています。
そこでお尋ねしたいのですが、共同生活援助の「サテライト型」をどのように準備して運営すればよいか、詳しく教えていただけますでしょうか?
障害者グループホームの「サテライト型住居」は、煩わしくない自立した生活を望む障害者の利用者の需要があり、現在人気の形態になっています。
ただ「サテライト型住居」の独自のコストや運営の難しさを理解しないと、思ったより収益が上がらず経営トラブルになる可能性があります。
この記事では事業者様の理解の一助になるように以下の内容を説明いたします。
- 共同生活援助「サテライト型住居」の概要がわかります
- 「サテライト型住居」の独自のコスト高の構造がわかります
- 「サテライト型住居」の低収益と支援難の理由がわかります
目次
【障害者GH】共同生活援助の「サテライト型」とは?設置や経営ポイントを徹底解説
共同生活援助(障害者グループホーム)は、本体住居と密接な連携を確保しつつ、本体住居と別の場所で運営する単独住居(=「サテライト型住居」)を持つことができます。
<「サテライト型住居」の基本条件について>
・本体住居1箇所につき、「サテライト型住居」は2箇所まで設置できます
☞1つの建物に複数の「サテライト型住居」を集約することはできません
・本体住居から20分以内の範囲(※車移動も可能)に「サテライト型住居」は設定できます
・「サテライト住居」ごとに、風呂/トイレ/洗面所/台所等の設備が必要です
・「サテライト住居」の面積は7.43㎡以上必要です
<「サテライト型住居」の利用者への支援について>
・1日に複数回の訪問による「定期的な巡回」を行います
・滞在時間数や頻度は個別支援計画に記載する必要があります
・原則3年間の利用に限定されます
障害者グループホームの「サテライト型住居」の概要についてわかりました。
ただ「サテライト型住居」の設置を活用して事業拡大するために、運営上のリアルな注意点や、活用方法について具体的に教えてもらえますか?
近年、障害者グループホームの「サテライト型住居」はその自立度の高さから需要が高まっています。
ただ需要が高いからといって「サテライト型住居」は、共同生活の場所から離れているが故に、設置の負担や支援の難しさが課題になります。
以下では障害者グループホームの「サテライト型住居」の設立・運営のポイントをわかりやすく説明いたします。
超リアル:「サテライト型住居」運営の注意点について
共同生活援助(障害者グループホーム)の「サテライト型住居」は、早く自立したいという想いから年々需要が高まっていて、利用者が直ぐに決まる傾向にありますが、「サテライト型住居」の設置コストや福祉支援の負担が増えることにご注意ください。
<注意点1:「サテライト型住居」の設置コストの注意点>
・消防設備の設置費用は、グループホームの事業者負担になります
・火災保険の費用は、利用者から徴収することはできません
・原状回復の費用は、グループホームの事業者負担です
・原状回復のための積立金を、利用者から徴収することはできません
・水回りの設備改修に費用が多くかかることがあります
<注意点2:「サテライト型住居」への支援の難しさについて>
・夜間支援を断るケースが多いです
・鍵をかけられて中に入れてもらえないこともあります
・中に入れない夜間支援は窓から消灯の確認で対応できる場合もあります
・ただ窓が設定されていない「サテライト型住居」の夜間支援は難しくなります
・障害の状況によって中で倒れて動けなくなっていることもあります
<注意点3:「サテライト型住居」の利用者について>
・比較的区分が低い利用者でないと、支援に関する事故リスクが高くなります
・日中支援が難しいため、日中活動に継続的にいく方が良いです
・家事に関して掃除ができる方でないと精神的不安定になる傾向があります
・基礎疾患をお持ちで服薬管理が多い方は避けた方がいいです
「サテライト型住居」の消防設備のコストが高くなることが多く、設置する階が高ければマンション全体に消防設備を配置しないといけなくなります
またそうした設置費用や原状回復費用を利用者から徴収することもできず、その代わりとして家賃に上乗せして受け取ることも認められておりません。
その上、夜間支援が可能かどうかも不明確な場合があり、「サテライト型住居」への支援は採算が合わないことも少なくないです。
具体例:「サテライト型住居」の活用方法について
共同生活援助(障害者グループホーム)の「サテライト型住居」は、「煩わしくなく自立した生活を望む障害者」の利用者の需要もありますが、他方でグループホームの事業者の都合でも設置して活用することがある点にご留意ください。
<具体例1:新しい共同生活援助を作る資金が十分でない>
新規で一棟の共同生活援助事業所を作るまでの資金的な余裕はないけれども、今の定員以上に利用者を確保できる見込みがある場合、「サテライト型住居」を設置することがあります。
<具体例2:本体住居内のトラブル回避のため>
本体住居内で利用者同士、または職員との関係で人間関係のトラブルが起こる場合、当人の精神状態を安定させるために「サテライト型住居」を設置することがあります。
<具体例3:男女混合を避けるため>
本体住居が男性棟または女性棟がよいという希望に応じることができない場合、男女混合の支援の不安をなくすために「サテライト型住居」を設置することがあります。
「サテライト型住居」は新しい共同生活住居より設置の費用はかかりませんが、比較的区分の軽い障害者が対象のため、収益も大きく上がりません
また「サテライト型住居」は本体住居内のトラブルやリスクを回避するために設置されることもありますのでご留意ください。
それにより本体住居に空室を作って、新たに営業活動を開始することもできるので、サテライト型設置のタイミングはうまく設定する必要があります。
まとめ
共同生活援助(障害者グループホーム)の「サテライト型住居」について詳しく分かりました。ありがとうございます。
「サテライト型住居」の独自のコストと支援の難しさを考慮し、経営戦略を練り直してみたいと思います。
共同生活援助(障害者グループホーム)の「サテライト型住居」は、「煩わしくなく自立した生活を望む障害者」の需要により人気となっています。
ただ「サテライト型住居」の入居者の区分が低いことから収益は高くなく、場合によっては夜間支援をつけることが出来なくなるかもしれません。 また「サテライト型住居」は本体住居から離れていることから細やかな支援は難しく、障害の程度によっては事故のリスクも高くなります。
「サテライト型住居」の良い点、難しい点をしっかり考慮して、自治体や利用者さんから信頼される組織を作ってください。
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